推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した事例/事案の概要

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ginkouhoumu

相続の取扱いは金融法務の重要な一角を占め、多数の判例や先例が集積されているが、金融取引や家族関係の変化等を背景に新たな問題も生じてきている。

このような中、注目すべき裁判例がいくつか示されており、金融取引と関連の深いものも見受けられるため、ここにまとめて採り上げてみたい。

判例3:「相続させる」旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合、特段の事情がなければ遺言は失効するとされた事例(最判平成23・2・22金融・商事判例1366号21頁)

1.事案の概要

Aには、BとXの2人の子がいたが、Aは、平成5年2月17日、所有にかかる財産の全部をBに相続させる旨を記載した条項および遺言執行者の指定に関する条項の2ヵ条からなる公正証書遺言をした。

Bは平成18年6月21日に死亡し、Yが相続人となった。その後、Aは同年9月23日に死亡した。Xは、Yに対し、Aの相続財産について法定相続分に相当する持分等を有することの確認を求める訴えを提起した。

2016年5月30日

銀行の開示義務を否定した事例/実務への指針

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ginkouhoumu

相続の取扱いは金融法務の重要な一角を占め、多数の判例や先例が集積されているが、金融取引や家族関係の変化等を背景に新たな問題も生じてきている。

このような中、注目すべき裁判例がいくつか示されており、金融取引と関連の深いものも見受けられるため、ここにまとめて採り上げてみたい。

判例2:預金口座の解約後に相続が発生し、口座名義人の共同相続人の1人から単独で取引明細の開示を求められた場合に、銀行の開示義務を否定した事例(東京高判平成23・8・3金融法務事情1935号118頁。上告・上告受理申立て)

3.実務への指針

銀行は、罰金者に対し、罰金契約に基づき、委任事務の受任者として預金口座の取引経緯を開示すべき義務を負い、預金者が死亡した場合には、共同相続人の1人は、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人の預金口座の取引経緯の開示を求める権利を単独で行使できるとされているが(「平成21年判決」という)、相続開始時に預金口座がすでに解約されていた場合、相続人がこの権利を行使できるのかどうかは明確ではない。

本判決は、委任事務終了時の報告を行えば受任者としての義務を果たし、永遠に受任事務の報告義務を負うことはないとして報告義務を否定したが、委任の規定との比較からも、解約済口座まで含めすべて開示に応じるのは事実上困難であることからも、実務に照らして妥当なものといえる。

また、本判決は、銀行が「仮に、信義則上」開示に応じる義務があるとしても、原告の請求は権利の濫用であるとして斥け、銀行が信義則上開示義務を負う場合があることを認める一方、開示請求の目的や開示対象の範囲、開示の可能性と手間や費用を総合して判断し、本件における開示請求は権利の濫用であると判断している。

平成21年判決でも、「開示請求の態様、開示を求める対象ないし範囲等によっては、預金口座の取引経緯の開示請求が権利の濫用に当たり許されない場合があると考えられる」旨の判示がなされており、本判決は、何が「権利の濫用」に当たるかの判断の参考になると思われる。

もっとも、相続人からの請求の場合、相続財産の範囲や所在の調査を目的とする場合が大半であろうから、これだけをもって権利の濫用とは解されないであろう。

なお、本件では、銀行が、弁護士法23条照会に対する回答を拒絶したことにつき損害賠償請求も行われ、本判決は、前記照会に回答する義務は照会者に対して負う義務ではないことを理由に請求を棄却しているが、近年の判例は、総じて調査嘱託や23条照会に対して回答する公的な義務を認めていることに留意する必要がある。

2016年4月26日

銀行の開示義務を否定した事例/本判決の概要

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相続の取扱いは金融法務の重要な一角を占め、多数の判例や先例が集積されているが、金融取引や家族関係の変化等を背景に新たな問題も生じてきている。

このような中、注目すべき裁判例がいくつか示されており、金融取引と関連の深いものも見受けられるため、ここにまとめて採り上げてみたい。

判例2:預金口座の解約後に相続が発生し、口座名義人の共同相続人の1人から単独で取引明細の開示を求められた場合に、銀行の開示義務を否定した事例(東京高判平成23・8・3金融法務事情1935号118頁。上告・上告受理申立て)

2.本判決の概要

銀行は、預金契約の解約後、元預金者に対し、遅滞なく、従前の取引経過及び解約の結果を報告すべき義務を負うと解することはできるが、その報告を完了した後も、過去の預金契約につき、預金契約締結中と同内容の収引経過開示義務を負い続けると解することはできない。

仮に、銀行が、信義則上、預金契約終了後、一定の範囲で契約期間中の取引経過の開示に応ずべき義務を負う場合があるとしても、本件開示請求2は、開示請求の目的からもその義務を超えるものというべきであり、仮に超えないとしても、第1審被告(銀行)に著しく過大な負担を生じさせるものとして、権利の濫用というべきであるから、これを認めることはできない。

2016年3月22日

銀行の開示義務を否定した事例/事案の概要

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相続の取扱いは金融法務の重要な一角を占め、多数の判例や先例が集積されているが、金融取引や家族関係の変化等を背景に新たな問題も生じてきている。

このような中、注目すべき裁判例がいくつか示されており、金融取引と関連の深いものも見受けられるため、ここにまとめて採り上げてみたい。

判例2:預金口座の解約後に相続が発生し、口座名義人の共同相続人の1人から単独で取引明細の開示を求められた場合に、銀行の開示義務を否定した事例(東京高判平成23・8・3金融法務事情1935号118頁。上告・上告受理申立て)

1.事案の概要

平成18年11月2日に死亡した被相続人の共同相続人の1人が、被相続人が生前に取引していた銀行を被告として、被相続人の取引開始以後の全取引経過の開示(本件開示請求1)、または、同人が被告との取引をすべて解約した平成17年4月18日に行われた取引と、それ以外の500万円以上の資金移動に関する一切の取引について詳細な内容の開示(本件開示請求2)を求めた。

2016年2月23日

非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定/実務への指針2

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ginkouhoumu

相続の取扱いは金融法務の重要な一角を占め、多数の判例や先例が集積されているが、金融取引や家族関係の変化等を背景に新たな問題も生じてきている。

このような中、注目すべき裁判例がいくつか示されており、金融取引と関連の深いものも見受けられるため、ここにまとめて採り上げてみたい。

判例1:非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定が違憲とされた事例(最大決平成25・9・4金融・商事判例1425号18頁)

3-2.実務への指針(2)

(続き)

さらに、本決定は、可分債権や可分債務については、権利行使や弁済では法律関係が確定したとはいえず、裁判や当事者の合意により終局的な分割が行われた場合にはじめて法律関係が確定するとしている。

銀行は、近年では、法定相続分の範囲内で各相続人の単独の払戻請求に応じる場合があると思われるが、本件規定の適用が排除されると法定相続分が遡って変更され、過払いが発生している可能性がある。

預金の払戻しに関しては、債権の準占有者に対する弁済(民法478条)により概ね有効とされると思われるが、問題なのは貸付金の回収である。

債務者が死亡し相続人が複数の場合、その内の1人が免責的に債務を引き受け、他の相続人が連帯保証するのが通常の手続と思われるが、相続人間で協議が整わなかった場合は、各相続人が法定相続分に従って債務を引継することになる。

この法定相続分が遡って変更された場合、一方で超過回収分が発生し他方で未回収分が発生するが、法定相続人との関係を個別に検討すると、債務額を超える金額を弁済した相続人については、不当利得返還請求が認められる余地があるように思われる。

このような例が現実に存在するかどうかは明らかでないが、民法に従って弁済を受けた銀行が不利益を受ける理由はないから、遡及適用を制限する判旨に照らし、弁済には影響しない形での解決が望まれる。

2016年1月26日