推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した事例/実務への指針

ginkouhoumu

相続の取扱いは金融法務の重要な一角を占め、多数の判例や先例が集積されているが、金融取引や家族関係の変化等を背景に新たな問題も生じてきている。

このような中、注目すべき裁判例がいくつか示されており、金融取引と関連の深いものも見受けられるため、ここにまとめて採り上げてみたい。

判例3:「相続させる」旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合、特段の事情がなければ遺言は失効するとされた事例(最判平成23・2・22金融・商事判例1366号21頁)

3.実務への指針

いわゆる「相続させる」旨の遺言がなされた場合、遺贈とすべき特段の事情がなければ当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきであり、その場合には、特段の事情のない限り何らの行為を要せず当該遺産は被相続人死亡時に直ちに相続により承継される(最判平成3・4・19金融・商事判例871号3頁。以下、「平成3年判決」という)。

この当該財産を相続すべき推定相続人が先に死亡した場合、遺贈(民法994条1項)と同様に遺言は効力を失うのか、代襲相続(同法887条2項)のように死亡した推定相続人の相続人に効力が及ぶのかについて、学説や判例は分かれていた。

本判決は、遺言者の意思解釈として、「相続させる」旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に当該資産を取得させる意思を有するにとどまると解して、前記の場合、原則として無効となると判示した。

もっとも、遺言に、推定相続人の相続人等に遺産を相続させる旨を明示することは可能で、明示されていなくても「特段の事情」があれば、その者に効力が及ぶことになる。

銀行としては、「特段の事情」を判断することは困難な場合が多いと思われ、遺言者の意思等が明確であるか当事者の同意を得た場合を除き、遺言が有効な場合と無効な場合を比較したうえで最小限の払戻しに応じるなど、慎重な対応をせざるを得ないであろう。

2016年7月26日